生涯スポーツとしてのレスリングに取り組む大井将憲さん(松本自衛隊)
今年も一般70kg級に出場。初戦は勝ち上がったが、続く準決勝で体育学校時代の後輩にあたる岩谷和樹さん(第一空挺団)の“ローリング地獄”の前にあっさりと黒星。グレコローマンの強豪らしからぬ内容での負けに、「グラウンドが守れないです。腕も極められていましたし」と苦笑い。
全日本王者にこそなっていないものの、2位が4度もあり、フランスで行われた大会でのメダル獲得の経験もある選手だった。グレコローマンの強豪ならローリングの防御は嫌と言うほどやっていたはずだが、「腕を極められたら仕方ないです。練習不足ですし」とのこと。「グッと力を入れると、けがをしそうで怖い?」との問いに、「グッと入れるだけの力も残っていないですよ」と、もう一度苦笑いした。
引退後は故郷の長野に戻り、一般自衛官として活動している。松本自衛隊にレスリング部はなく、大会前に臨時で編成する程度。もっぱら個人で「体力が落ちないように」トレーニングを積むだけ。母校の北佐久農高ほかレスリング部のある高校も、「距離もあるので、なかなか行けませんね」と言う。
そのため全日本社会人選手権や全国社会人オープン選手権への出場はせず、この大会に絞って出場する。「まだレスリングをやりたいですから」との理由からだ。大井さんほどの強豪なら優勝があってもおかしくはないが、まだ優勝の経験がない。「継続的に練習していないと厳しいです」と言う一方、「体が動くうちは出場続けたい。優勝したいですね」と、今後も参戦を続ける予定だ。
レスリング界の中心からは離れてしまったが、拓大や自衛隊、さらには日本レスリング界の活躍は気になり、刺激材料として受け止めている。「活躍を聞くたびに、自分も頑張らなければ、と思います」。“チャンピオンスポーツ”が“生涯スポーツ”に変わっても、レスリングが大井さんの生活を支えている。