(文・撮影=増渕由気子) 2連覇と春夏連覇で最優秀選手賞を受賞した樋口
高校レスリング界の雄、霞ヶ浦のエースとして優勝が絶対という重圧があったからか、優勝した瞬間もガッツポーズもなく、冷静に勝ち名乗りを受けるだけだった。
■喜びを感じるのは団体戦優勝のあと
「勝って当然だったので、内容にもこだわっていました」と振り返る樋口が、唯一悔やんだことは、決勝の小柳和也(山梨・韮崎工)から「危ないところもあった」と、ポイントを奪われそうになったことだった。
個人戦を優勝しても手放しで喜べない理由がある。今大会の日程が個人戦、団体戦というスケジュールで、きょう7日から学校対抗戦が始まる。昨年、霞ヶ浦は決勝で花咲徳栄(埼玉)に敗れて王座から陥落。今年は王座奪回に燃えており、個人戦で優勝したからといって、緊張の糸が緩むことはない。
「明日から、団体戦なので気を抜いてはいけないと思っています。明日からは霞ヶ浦のキャプテンとして優勝できるようにチームをまとめたい」と自覚も十分だ。
あっさりと優勝したかに見えるが、そうではなかった。昨年のインターハイから岐阜国体、全国高校選抜選手権とビッグタイトル3連勝中だった樋口に対し、ライバルたちは「打倒樋口!」を合言葉に研究を重ね、樋口包囲網は大会ごとに厳しくなっていた。
「みんなが僕に勝つための対策をしているようでした。トーナメント序盤の選手は、攻めずにカウンター狙いでした」。だが、樋口もそれを見越して、練習に取り組んできた。「その中で安定して(タックルを)取り切れたことはよかった」と手ごたえもあったようだ。
■1試合分のエネルギーで5試合を勝ち抜く

全試合圧勝で勝ち上がった樋口(赤)
激戦区として知られる55kg級にも関わらず、個人戦で樋口が試合したトータル時間は、6分55秒。トータルで、ほぼ1試合分(6分)しかしてない計算となる。「1回戦から飛ばして1分半くらいで終わらせるようにしました。個人戦で全部(力を)使い果たすと、4日目までもたない。全然消費していないので、(もっとやりたくて)フラストレーションがたまっている状態です」とノーダメージを強調した。
霞ヶ浦からは樋口のほかに120kg級の貝塚賢史が優勝。50kg級の高橋拓也が準優勝と3人が入賞。他の3階級もベスト8に食い込み、総合力を見せつけた。今大会は、いなべ総合(三重)や埼玉栄(埼玉)なども学校対抗戦の優勝候補だが、2階級を制したのは霞ヶ浦のみ。やはり地力を見せつけた。
「団体戦では最高のパフォーマンスを出しますので、見ていてください。今年は圧倒的に優勝します」と樋口は学校対抗戦の王座奪回を誓った。