【上・下】午後11時ころから報道陣を含めて200人以上がブエノスアイレスからの生中継を待った
各競技ともプレゼンテーションのあと、質疑応答が行われ、先に終わった2競技に比べ、レスリングへの質問が多く、しかも「汚職やメダルの売り買いがあるという情報がある」「女子にグレコローマンがないのはなぜか」など厳しい質問も出た。選手の間には「大丈夫?」という不安の表情も浮かんだ。
それも終わり、投票へ。テレビ画面には、結果らしき書類がIOC幹部のテーブルを回覧するシーンが映し出され、一段と緊張が高まった。ジャック・ロゲ会長が「3競技団体(の関係者)は自分の席に戻ってください」と促したことで、決選投票はなく、一発で結果が出たことが予想され、「それならレスリングだろう」というムードへ。
ロゲ会長が「95人が投票し、48票が過半数。無効票はなかった」などという説明したあと、「レスリング、49票」と発表。その瞬間、選手から歓声や拍手が湧き上がり、レスリング道場は歓喜に包まれた。
すぐに記者会見。福田富昭会長は総会へ行っていて不在だったが、高田裕司専務理事らの協会幹部と、3人のロンドン・オリンピック金メダリストが報道陣に対応した(小原日登美さんもブエノスアイレスへ)。 「レスリング」と発表された瞬間、歓喜に包まれた。【上】抱き合う米満達弘と高谷惣亮。【下】がっちり握手の吉田と伊調。
■吉田沙保里選手(ALSOK)「長いようで、あっという間の7ヶ月間だった。6月(のIOC理事会)からは、あっという間だったような気がする。決まった瞬間は、『やった!』と思ってから、ホッとした。たくさんの方に協力いただき、レスリングを残したいと言う気持ちがひとつになったからこそ、こういう結果になったと思う。皆さんへの感謝の気持ちでいっぱい。
世界中のレスリング界の人間が、ふだんは敵同士でだけど、除外問題が起こって以来、仲間意識が強くなったと思う。あたたかく、本当に協力し合えるすばらしい人達だと思いました。レスリングの存続が決まった瞬間を、後輩を含めてみんなで迎えられたことがよかった。子供たちの夢をつなげられることになり、本当によかった。
(総会での)レスリングのプレゼンテーションもすばらしかった。最終的には、あの人達の力だと思う。投票は(過半数を1票超える49票より)もっと上にいくと思った。
9月は3つの闘いがあった。東京とレスリングは勝ち取ったので、あとは世界選手権で暴れ、最高の1年にしたい。落ちたスカッシュと野球、ソフトボールの分までレスリングは頑張らなければならんばいと思います」
【上】歓喜のあとは記者会見。【下】3人の金メダリストが、鯛を食べて「オメデタイ」気持ちを表した。
悪いこと(除外)から始まったけど、最後はいい形で終わった、本当によかった。FILAがここまでルールを変え、階級を変えることは予想していなかった。女子のオリンピック実施が6階級になったことで、女子の子供達に夢を与えられたと思う。 2020年大会(の出場)は、興味あります(笑)。7年後はどうなっているかは分からないけど、今を真剣に取り組み、やれるところまでやっていきたい。(選手としてやっていなくても)教えることや支援できるいことがあれば、少しでも協力したい」
■米満達弘選手(自衛隊)「まずホッとしました。『大丈夫』とは言われても、発表では何が起こるか分からないので、緊張していました。プレゼンテーションはすばらしかった。自分も、将来的には競技だけではなく、あれくらい話せる人間になりたいと思いました。
東京に決まり、レスリングが決まりましたが、まだ2020年大会の具体的なシーンは浮かんできません。2020年のオリンピックで現役でいられるかどうかは分からない。34歳。体のピークは超えていると思う。選手としてではなく、メダリストとして大会を盛り上げることはできるので、オリンピックムーブメントを伝えていきたい。
オリンピックは、単に優勝争いではなく、いかに社会貢献して世界平和に役立てられるかどうかのイベント。その理想と素晴らしさを伝えていきたい」